
会計年度任用職員は処遇改善と言われていますが、ぶっちゃけ給与でみたら、そんなに大きな改善とはいえないです。
しかし、確実に改善していると感じるのが、「休暇制度」です。
そこで、今回は会計年度任用職員でも使える休暇制度の一つである「産前産後休暇」について述べたいと思います。
この記事を読めば、
・会計年度任用職員でも「産前産後休暇」って使えるの?
・いつまで産前産後休暇は使えるの?
・産前産後休暇中の給料はどうなるの?
といった疑問を解決することができます。
非正規公務員の約8割は女性

産前産後休暇がなぜ重要かというと、そもそも、非正規公務員の8割は女性であるというデータがあります。

臨時・非常勤はほとんどが女性というイメージが強いが、今回の調査で女性がほぼ8割(80.8%)、男性は5人に1人であることが明らかとなった。
自治体区分別では、県の女性比率が67.6%と平均より若干低い。(図5)
職種別では、看護師・准看護師の女性比率が98.6%、保育士が98.1%、学校給食関係職員96.7%、学童指導員が92.1%、病院事務職員92.3%、図書館職員91.9%で、これらは典型的女性職種といえる。
つまり、非正規公務員の問題とは、女性公務員の問題ともいえる側面があるといえます。
女性の社会進出を進めていくためにも、子育てしやすい環境整備は必要ですし、子供を妊娠しても休める休暇制度「産前産後休暇」は最低でも必要であると思います。
しかしながら、自治体によっては産前産後休暇が設定していない自治体があるのです!
・非正規公務員の8割は女性。
・非正規公務員が子どもを産みやすい産前産後休暇は必要不可欠
非正規公務員に産前産後休暇を与えていない自治体がある

そもそも会計年度任用職員の制度が始まる背景にあったのは、非正規公務員の低すぎる処遇にありました。
特に低すぎる処遇で代表的なものが、休暇制度であり、深刻だったのが「産前産後休暇」の問題でした。
そもそも論として、非正規公務員で、労働基準法上の「労働者」に該当する場合は、原則として労働基準法が適用されるべきなのです。
そして、労働基準法においては、産前産後休暇を与えるべきと規定しています。
(産前産後)
第65条
使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
しかし、総務省の「地方公務員の短時間勤務の在り方に関する研究会」の報告書において、産前産後休暇が「無い」と回答している自治体が存在しています。
しかしながら、各地方公共団体においては、臨時・非常勤職員に対する労働関係法令の適用又は遵守に対する意識が必ずしも高くないケースがみられる。例えば、休暇等についてみれば、労働基準法に定める産前産後休業、生理休暇について、実態調査結果において、「無い」と回答している団体もあり、これらの休暇等に関して、臨時・非常勤職員から請求等があれば法に基づき就業させてはならないこととなるが、制度としては整備されていない状況もみられる。
このような状況があることを総務省も認識していましたが、基本的には各自治体の判断に委ねてきておりました。
しかし、なかなか改善されず放置されたままの自治体もありました。
そこで、2020年4月から始まる会計年度任用職員の制度スタートによって、全国一律で処遇改善の流れが加速したのです。
・非正規公務員でも労働者に該当する場合は、労働基準法が適用される。
・労働基準法が適用されるのに産前産後休暇を整備していない自治体があった。
会計年度任用職員は産前産後休暇の取得できる

産前産後休暇が無かった非正規公務員ですが、会計年度任用職員の制度によって全国一律で産前産後休暇が取れるようになります。
よって、会計年度任用職員なのに産前産後休暇の規定を設けていない自治体は、違法ということになります。
会計年度任用職員はいつまで産前産後休暇を取れる?
基本的に会計年度任用職員は正規職員と同じく産前産後休暇を取れることができるので、労働基準法65条の規定に即して
・産前6週間
・産後8週間
の範囲内で休むことができます。
会計年度をまたぐ場合の産前産後休暇は?
例えば、会計年度満了ギリギリに産前産後休暇を取る場合においては、会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアルの改訂について(通知)において、下記のように示されています。
会計年度任用職員が、産前産後休暇、介護休暇、育児休業について、その取得要件を満たしている場合には、
・ 会計年度任用職員の任期の末日(任期の末日が年度末である場合には、年度末)まで取得することができ、
・ 翌年度に再度の任用がなされた場合には、改めて取得することにより、年度をまたいで当該休暇、休業を継続することができます。
よって、年度をまたぐ場合であっても、産前産後休暇を取得することができるわけです。
・会計年度任用職員は産前6週間、産後8週間で休める。
・会計年度をまたぐ場合も産前産後休暇を継続できる。
産前産後休暇中の給料はどうなる?
産前産後休暇中ですが、参考までに正規公務員の場合は、「特別休暇」に該当するため、「有給」です。もちろん、満額支給です。
一方で、会計年度任用職員の場合は、労働基準法が適用されるため、「無給」扱いです。
しかし、ご安心ください。給与はでないものの、健康保険から「出産手当金」が支給されます。
被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。
出産日は出産の日以前の期間に含まれます。また、出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても出産手当金が支給されます。
出産手当金は、だいたい給料の3分の2が支給されます。
なので、産前産後休暇を取る前に協会けんぽに「健康保険出産手当金支給申請書」を提出しましょう。
【まとめ】会計年度任用職員の制度スタートで子供を産みやすい環境に近づいた?
会計年度任用職員の趣旨の一つは、「同一労働・同一賃金」ですが、まだまだ正規公務員が産前産後休暇中は、有給(給料満額支給)の一方で、会計年度任用職員(非正規公務員)は無給でかつ、出産手当金の3分の2しか支給されません。
このように、正規と非正規にはまだまだ格差があります。
しかし、これまで認めていなかった産前産後休暇が制度として確立されたことは、評価できます。
今後、ますます存在価値が増していく非正規公務員の処遇改善、特に女性会計年度任用職員の処遇改善は重要になっていくでしょう。