会計年度任用職員

会計年度任用職員とは?【種類・導入される理由・利点や課題を徹底解説】

2020年4月から、非正規公務員(臨時・非常勤職員)の働き方を大きく変える「会計年度任用職員」の制度が始まります。

会計年度任用職員の目的の一つは、国や地方自治体で働く非正規公務員の処遇を改善していくこととされています。

でも、実際のところ、非正規公務員のみなさんは、会計年度任用職員の制度に対して、以下のような不安を抱えてるのではないでしょうか?

 

「そもそも、会計年度任用職員って何?」

「会計年度任用職員で処遇が変わるって本当?」

「何で会計年度任用職員が導入されるの?」

 

確かに、会計年度任用職員の制度ってわかりにくいところがありますよね(^^;

私自身も、とある地方自治体で働く公務員をしながら、労働組合の役員を務めており、会計年度任用職員の制度についても、調べる機会が多くありました。

そこで、今回は、不安を抱えている非正規公務員の皆様に向けて、会計年度任用職員の制度について、

 

・会計年度任用職員の種類とは?

・会計年度任用職員が導入される理由は?

・会計年度任用職員の利点や課題は?

 

といったポイントごとに会計年度任用職員について解説したいと思います!

地方自治体で働く非正規公務員の数は64万3000人!

地方自治体で働く非正規公務員の人数は、総務省の「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」によれば、64万3,000人と言われています。

 

非正規公務員は任用根拠によって「一般職非常勤職員」「特別職非常勤職員」「臨時的任用職員」の3種類に大別できますが、人数は以下の通りです。

一般職非常勤職員 16万7千人
特別職非常勤職員 21万6千人
臨時的任用職員 26万人

 

 

非正規公務員の職種の内訳を見てみると、事務補助職員が圧倒的に多く10万人以上と多く、また、教員・講師が次いで多く9万人超となっています。

 

保育士、給食調理員、図書館職員など、いろいろな職場で働いていることがわかります。

また、平成17年と比べて、非正規公務員の数は、約19万人も増えています。

平成17年 45万5840人
平成20年 49万7796人
平成24年 59万8977人
平成28年 643,131人

 

財政難により予算が厳しくなる一方で、高齢化による行政ニーズの高まりに対応するため、正規職員の穴を埋めるために、非正規公務員が増えているというわけです。

 

【移行前】非正規公務員の種類は?

ここで、非正規公務員の種類について解説します。

非正規公務員の数は、3つに大別されます。

なお、以下の種類は、会計年度任用職員制度へ移行する前の種類です。

 

・特別職非常勤職員

・一般職非常勤職員

・臨時的任用職員

 

では、一つずつ簡単な説明をしますね。

 

特別職非常勤職員

 

特別職非常勤職員とは、地方公務員法3条3項3号に列挙された種類の職種を指します。

3 特別職は、次に掲げる職とする。
一 就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職
一の二 地方公営企業の管理者及び企業団の企業長の職
二 法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた委員及び委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤のもの
二の二 都道府県労働委員会の委員の職で常勤のもの
三 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職
四 地方公共団体の長、議会の議長その他地方公共団体の機関の長の秘書の職で条例で指定するもの
五 非常勤の消防団員及び水防団員の職
六 特定地方独立行政法人の役員

 

なお、特別職非常勤職員は、地方公務員法の適用外です。

というのは、特別職非常勤職員は、本来専門性が高く、労働者性が低いことから、地方公務員法の対象外というわけです。

 

代表的な特別職非常勤職員は、

・顧問、参与

・各種相談員(消費生活相談員、青少年相談員等)

・統計調査員

となっております。

 

一般職非常勤職員

 

一般職非常勤職員は、地方公務員法3条2項にも示されているように、触れた地方公務員法3条3項3号で列挙された特別職以外の非常勤職員を指します。

2 一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする。

 

なお、任用根拠は、地方公務員17条です。

(任命の方法)
第十七条 職員の職に欠員を生じた場合においては、任命権者は、採用、昇任、降任又は転任のいずれかの方法により、職員を任命することができる。

 

ん?あんまりピンとこないな?と思いませんか?

そうなんです。明確には一般職非常勤職員の任用については示されていませんが、この地方公務員17条を任用根拠として許されています。

 

なお、一般職非常勤職員は、地方公務員法が適用されます。

先ほどの特別職非常勤職員と異なり、専門性が低く、労働者性が高いことから、地方公務員法の対象というわけです。

 

代表的な一般職非常勤職員は、

・給食調理員

・放課後児童支援員

となっております。

 

臨時的任用職員

 

臨時的任用職員の任用根拠は、地公法第22条第2項又は第5項となっています。

2 人事委員会を置く地方公共団体においては、任命権者は、人事委員会規則で定めるところにより、緊急の場合、臨時の職に関する場合又は採用候補者名簿(第二十一条の四第四項において読み替えて準用する第二十一条第一項に規定する昇任候補者名簿を含む。)がない場合においては、人事委員会の承認を得て、六月を超えない期間で臨時的任用を行うことができる。この場合において、その任用は、人事委員会の承認を得て、六月を超えない期間で更新することができるが、再度更新することはできない。

5 人事委員会を置かない地方公共団体においては、任命権者は、緊急の場合又は臨時の職に関する場合においては、六月をこえない期間で臨時的任用を行うことができる。この場合において、任命権者は、その任用を六月をこえない期間で更新することができるが、再度更新することはできない。

 

先ほどの一般職非常勤職員と特別職非常勤職員と異なり、臨時的任用職員はあくまでも欠員が生じたときなどの緊急時のみ採用となります。

もちろん、臨時的任用職員は労働者性が高いため、地方公務員法が適用されます。

 

会計年度任用職員とは?【移行後】非正規公務員の種類

会計年度任用職員とは、2020年4月から始まる非正規公務員の新しい任用形態です。

会計年度任用職員に移行する前の「特別職非常勤職員」「一般職非常勤職員」「臨時的任用職員」の3種類は、以下のように整理されます。

 

・特別職非常勤職員

・臨時的任用職員

・会計年度任用職員(new)

 

 

一般職非常勤職員という職種は消滅し、臨時的任用職員と共に会計年度任用職員に統合されます。

 

会計年度任用職員の「フルタイム」と「パートタイム」の違いは?

 

会計年度任用職員は勤務時間によって

・フルタイム会計年度任用職員

・パートタイム会計年度任用職員

に大別されます。

 

違いはずばり「38時間45分」の勤務時間です。

 

フルタイム会計年度任用職員は、正規公務員と同じく週38時間45分であり、フルタイムの場合は昇給ができます!

一方で、パートタイムは38時間45分より1分でも短ければパートタイムに位置付けられます。

なお、パートタイムの場合は、報酬と費用弁償、期末手当が支給できることになりました。

 

会計年度任用職員が導入される理由

会計年度任用職員が導入される大きな理由は、ずばり非正規公務員の処遇が低すぎることにあります。

非正規とはいえ、公務サービスを担い手であり非常に重要な役割を果たしていますが、給与はもちろん各種手当でも正規職員に比べて低すぎる現状があります。

いわゆる「官製ワーキングプア」と呼ばれる状況です。

 

また、自治体によって非正規公務員の任用・勤務条件もバラバラであり、適正な任用・勤務条件を確保するために会計年度任用職員の制度に移行することになりました。

 

では、以下では会計年度任用職員に移行する理由を解説したいと思います。

 

【理由1】非正規公務員の低すぎる処遇

 

非正規公務員の処遇は大きく「給与・手当」「休暇・休業制度」に整理されます。

まず、非正規公務員は、正規公務員に比べて給与水準が低くく、昇給や昇格がありませんので、ずっと低い給与のままです。

またボーナスにあたる期末手当はもちろん、各種手当も支給されないことから、給与面が圧倒的に低いというのが非正規公務員の抱える深刻な問題です。

 

また、正規公務員の休暇についても、非正規公務員は劣ります。

実際、産前産後休暇もありませんし、夏季休暇についても正規公務員よりも少ない日数が大半です。

同じように働いているのに、勤務形態が非正規というだけで休みづらい(休めない)という状況があります。

 

【理由2】非正規公務員の任用・勤務条件が自治体でバラバラ

 

非正規公務員はあくまでも、優れた専門知識や見識を期待される場合や、正規公務員の補助的な役割が想定されています。

しかし、自治体によっては、臨時的任用職員なのに正規公務員並みの重責を担わされている場合もありますし、逆に専門性を活かせると思ったら、単純労働に従事させられている特別職非常勤職員もいました。

また、任用についても同じ職種なのに、自治体によって試験を行わずに任用している場合もあり、これも任用も濃淡があるという問題点がありました。

 

会計年度任用職員の利点は?

処遇は低い、自治体によっては勤務条件等などがバラバラの非正規公務員ですが、会計年度任用職員に移行によって処遇改善のつながる多くの利点があります。

 

【利点1】期末手当など各種手当が支給される

これまで会計年度任用職員に支給されていなかったボーナス(期末手当)が支給できるようになりました。

その他にもフルタイムの会計年度任用職員の場合は、

・通勤手当

・退職手当

・地域手当

・時間外手当

・通勤手当

といった正規公務員に保障されている手当も受けられるようになりました。

 

【利点2】休暇や休業制度が充実される

会計年度任用職員は、これまでの非正規公務員では認められていなかった産前産後休暇や育児休業といった各種休暇・休業制度が認められています。

ただし休業が認められたものの、無給であることが正規公務員に比べて不利といえますが、それでも休業が認められているのは前進といえるでしょう。

 

・産前産後休暇(無給)

・家族の看護休暇(無給)

・介護休暇(無給)

・結婚休暇(有給)

 

【利点3】任用の空白期間の廃止

これまでは任用期間が満了後に引き続き任用することができず、あえて空白期間を設ける場合があったのですが、会計年度任用職員に移行したことで、この空白期間が廃止になりましあ。

よって、空白期間中が解消されることで安定的に雇用がつながるようになりました。

とはいえ、後述しますが、任用期間は1年間という状況は変わりませんが、それでも連続した雇用ができることは評価できるでしょう。

 

会計年度任用職員の課題は?

処遇改善が一定図られている会計年度任用職員制度ですが、まだまだ課題が多いのも事実です。

【課題1】任用期間が移行前と同じく1年間限定

 

会計年度任用職員という名前のとおり、任用は1年間ですので、不安定感は拭えません。

もちろん、制度上、再度の任用を妨げないとなっているものの、あくまでも会計年度(1年間)という制約があるので、非正規という働き方の宿命かもしれません。

 

【課題2】会計年度任用職員のフルタイムとパートタイムの格差

 

会計年度任用職員は38時間45分という境界線のもと、1分でも少なければパートタイムとなります。

勤務時間がフルタイムに比べてパートタイムが短いため、その分支給される報酬がフルタイムよりも低くなります。

また、フルタイムに支給される退職手当が、パートタイムには支給されません。

 

このように同じ会計年度任用職員でもフルタイムとパートタイムでも処遇に違いが生じる勤務条件となっています。

 

【課題3】会計年度任用職員の給料や期末手当を支給するための財源確保

 

会計年度任用職員の導入により、これまで支給されていなかった期末手当といった各種手当の支給により人件費が増えます。

そもそも、財政的に余裕がない自治体によっては、財政事情から会計年度任用職員の処遇改善に結び付かない恐れがあります。

もちろん、国も黙って見ているわけではなく、1700億円規模の財源を地方交付税措置することを表明しています。

 

非正規公務員の人件費が増加 ボーナスで1700億円

 総務省は18日、2020年度から非正規の地方公務員に期末手当(ボーナス)の支給が可能になるのを受け、自治体全体で年間人件費が1700億円増加する見込みだと明らかにした。財政運営に支障が生じないよう、全額を地方交付税で手当てする。

 総務省が全ての都道府県、市区町村を対象に、非正規職員にボーナスを支給した場合の20年度の人件費を調べた。その結果、支給できなかった18年度分に比べ、1700億円多いことが判明。20年度政府予算案を巡る財務省との調整で、全額が交付税で手当てすべき自治体歳出として認められた。

 

ただし、今後も会計年度任用職員の処遇改善を図っていくためには、さらなる国としての財源措置は必要ですね。

 

【課題4】ボーナスが支給される代わり基本給が下がる自治体が多い

 

会計年度任用職員をめぐる議論で最も問題となっているのが、期末手当を支給する代わりに基本給を下げる自治体が存在しているということです。

 

非正規公務員 一部自治体で給料減額の動き

全国の自治体で働く「非正規公務員」にボーナスの支給を可能にする新たな制度が新年度から始まるのを前に、一部の自治体で毎月の給料などを減らす動きが出ていることがわかりました。総務省は財政悪化を理由にした給料の抑制などはやめるよう、全国の自治体に通知しました。

全国の都道府県や市区町村などで非常勤や臨時の職員として働く「非正規公務員」は4年前の時点でおよそ64万人に上り、正規職員と仕事の内容が同じでも、給料が低いなど待遇改善が課題となっています。

こうした中、すべての「非正規公務員」にボーナスの支給を可能にする新たな制度が新年度から始まりますが、総務省によりますと、一部の自治体ではボーナスの支給に合わせて毎月の給料などを減らす動きが出ているということです。

このため総務省は財政悪化を理由にした給料の抑制などはやめるよう全国の自治体に通知しました。

通知ではフルタイムで働いていたのに合理的な理由もなく勤務時間を短くしたり、ボーナスの支給に合わせて毎月の給料を減らさないことなどを求めています。

総務省によりますと、新年度から全国のすべての自治体が「非正規公務員」にボーナスを支給する見通しで、これに伴う人件費はおよそ1700億円に上る見込みです。

このため総務省はこの総額のおよそ1700億円を地方交付税として自治体に配分する方針です。

 

本来の目的である非正規公務員の処遇改善が、財政事情によって歪められている事例があります。

そもそもボーナス支給するために基本給を下げるのは本末転倒です。

総務省も自治体に財政事情で勤務時間を短くする、基本給を下げるといった運用しないように呼び掛けているようですが、実効性は疑問を感じます。

 

本記事のまとめ

会計年度任用職員は、処遇改善につながっていると思える反面、まだまだ課題が多くあることがおわかりになったかと思います。

では、ここで今回の記事をまとめます。

・自治体の非正規公務員は63万人超で年々増加傾向

・非正規公務員は2020年4月から

「会計年度任用職員」「特別職非常勤職員」「臨時的任用職員」

の3種類に分類される。

・会計年度任用職員は勤務時間「週38時間45分」で

「フルタイム」と「パートタイム」

の2種類に大別される。

会計年度任用職員の利点は

①期末手当など各種手当が支給される

②休暇や休業制度が充実される

③任用の空白期間の廃止

会計年度任用職員の課題は

①任用期間が1年間限定

②フルタイムとパートタイムで退職手当が支給されないといった格差の存在

③期末手当を支給するための財源確保

④期末手当を支給するために基本給を下げる自治体が一部存在する。

以上です。

今後も本ブログでは会計年度任用職員のみなさまに特化した記事を書いていきますので、よろしくお願いします。