労働組合

最強の官公労「自治労」とは?組合員数79万人を誇る巨大労組を徹底解説

 

官公労とは、国家公務員や地方公務員が結成する労働組合であるが、そんな官公労で最大の組合員数を誇るのが、地方公務員で結成される労働組合「全日本自治団体労働組合」通称「自治労」です。

そこで、今回は日本における最強の官公労である自治労について解説したいと思います。

自治労の基本プロフィール

正式名称:全日本自治団体労働組合

略称:自治労

組合員数:79万人(平成 29 年労働組合基礎調査の概況 – 厚生労働省より)

主な組合員:地方公務員、公営企業職員等

公式サイト:http://www.jichiro.gr.jp/

 

自治労の沿革

自治労連としての結成から自治労統一まで

もともと自治労は1947年(昭和22年)に「自治労連」(現在の共産党系の労働組合とは別!)として結成されましたが、組合内部の右と左の対立によって、1949年に分裂して、自治労協が結成されました。

その後、1954年に両者は和解して合併して、自治労に統一して発足しました。

ちなみに、統一前の自治労連はナショナルセンターである総評(日本労働組合総評議会)に加盟しており、統一後も総評加盟の産別として存続しました。

 

連合加盟で自治労連が分裂

1988年に弱体化しつつあった労働組合の勢力を結集させるために、総評は別のナショナルセンターである同盟と合併する方針を打ち出し、総評の加盟産別である自治労もそれに追従しました。

しかし、これに自治労左派は強く反発し、同年に自治労から離脱して、新たに「自治労連」を結成しました。(なお、自治労は連合に加盟し、自治労連は全労連へ加盟しました。)

 

現在の自治労

2002年に入り、公営企業組合である「全国競争労働組合」と合同労働組合である「全国一般労働組合」が統合をした結果、組合員は約80万人規模にまで拡大しました。

自治労連というナショナルセンターはあるものの、事実上の日本を代表する官公労として現在に至るというわけですね。

 

自治労の特徴は?

自治労は、全国各地の県庁、市役所、町村役場、一部事務組合などの地方自治体や公営企業など公共サービスに携わる職員が加盟している労働組合です。

※なお、正確には地方公務員は労働組合法の適用除外であることから、労働組合を結成することができません。その代わり、職員団体という形で組合を結成して、労働協約締結権はないものの、当局と交渉することができます。

 

組織体制は?(中央組織)

組織図

自治労は中央執行委員長を頂点にして「書記局」「財政局」の大きく2つの組織があり、書記局には、「総合企画総務局」「総合労働局」「総合政治政策局」「総合組織局」「総合公共民間局」「監査室」が下部組織にあります。

 

本部執行体制

自治労の実務上の方針を決める中央執行委員会は、執行委員長はもちろん、副中央執行委員長2名が委員長を補佐し、書記長、書記次長、各局長、各部長、特別執行委員、監査委員で組織されています。

 

組織体制は?(地方組織)

基本的に各自治体ごとに「単組」を結成し、都道府県単位で「本部」を構成しています。県本部は自治労の下部組織ではありますが、実質的には県本部単位で動いています。

全国的に統一行動を行うために、全国9つのブロックごとに地区連絡協議会「地連」を結成しています。

 

自治労の地連一覧

北海道地区:北海道
東北地区:青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、新潟
関東甲地区:群馬、栃木、茨城、埼玉、東京、千葉、神奈川、山梨
北信地区:長野、富山、石川、福井
東海地区:静岡、愛知、岐阜、三重
近畿地区:滋賀、京都、奈良、和歌山、大阪、兵庫
中国地区:岡山、広島、鳥取、島根、山口
四国地区:香川、愛媛、徳島、高知
九州地区:福岡、佐賀、長崎、大分、宮崎、熊本、鹿児島、沖縄

 

このように全国的に意思統一が図られているからこそ、全国的な労働運動ができるわけですね。

 

自治労の財政状況は?

自治労の活動費である組合費は、各都道府県本部が月額1人一律570円(闘争資金として年3,000円)を納入しています。なお、闘争資金額については、都道府県本部が徴収額を決定しており、濃淡があります。

2009年度当初における一般会計の徴収額は収入88億8121万円、その他基金会計が125億円あります。すべての正味財産を含めると、225憶795万円です。

これだけ莫大な組合員収入が安定的にあるのも、地方公務員という安定した身分ゆえのことでしょう。それに組合費もチェックオフで取りっぱぐれもないので、強い財政基盤が構築できているのです。

 

自治労の活動内容

賃金確定交渉

公務員の職員団体は労働協約締結権はないものの、労使交渉して、賃金引上げを行う旨の書面協定を締結することができます。この一連の動きは「賃金確定闘争」と呼ばれています。

公務員は労働基本権が保障されていないため、代替として実質的な賃上げは人事院勧告制度に基づいて決められています。地方公務員24条で定めているように、自治体ごとに条例で定められています。また、職員給与は、同法にもあるように民間準拠を基本とされています。

 

(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)
第二十四条 職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。
2 職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。
3 職員は、他の職員の職を兼ねる場合においても、これに対して給与を受けてはならない。
4 職員の勤務時間その他職員の給与以外の勤務条件を定めるに当つては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。
5 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。

 

人事院勧告を受けた都道府県や政令指定都市は労使交渉を経て、給与条例案を改正して採択して決定しています。市町村は人事委員会が設置されておらず、勧告制度がないのですが、人事院勧告を「タテ」にして当局と交渉をします。

人事院勧告は7月下旬から8月上旬に向けて人事院に賃上げを要求します。人事院勧告が出たあと閣議決定、国会での公務員給与改正法を見据えて、各都道府県本部や中央が交渉を行います。

なお、賃金確定交渉は、賃金だけでなく、職員の福利厚生も広く議論されます。

 

職員定数交渉

賃上げと同じくらい重要なテーマが、行政改革によって削減されつつある職員数を増やす職員定数交渉です。職員定数も各自治体ごとの条例に基づいて決められております。この定数を条例定数と呼びます。

この条例定数については、各自治体ごとの機構改革や組織改編にも絡むため、労使交渉を経て決められます。ただし、最近は各自治体の財政状況は良くないため、職員定数を増やせないという状況があります。

また、職員給与のように人事院勧告といった「タテ」がないため、なかなか要求実現は難しいのが現実です。

 

自治研活動

自治労は、職場で取り組んだ自治体の改革や住民サービスの向上につながる取り組みを「自治研活動」という形で取り組んでいます。1956年に山梨県から始まり、2年に一度全国集会を開催しています。

自治労のシンクタンクである「地方自治総合研究所」「自治研センター」がこの自治研活動を集約して、職場に広げる取り組みを行っています。なお、取り組み内容については雑誌である「月刊 自治研」を発刊しています。

 

政治活動

政治活動として、自治労は「組織内候補」として多くの国会議員や地方議員を輩出しています。

支持政党は、主に立憲民主党や社会民主党としており、「自治労協力国会議員団」「自治労自治体議員連合」があり、特別執行委員という形で組合に所属しています。

 

えさきたかし:1月29日 自治労協力国会議員団会議に出席しました

 

政治活動を通じて、公務員の雇用環境の改善につなげる法案や認められていない労働基本権の獲得に向けた政府に対する交渉を行っています。